水温について。

某社のカタログを見ててふと思いました。

ローテンプサーモ

値段もそこそこ安く、気軽に水温を下げる事ができるパーツとして重宝?されているようで。

しかし、これって意味があるのかね?

水温が上がる原因を考えてみます。

水温はなぜ上昇するのだろうか? なぜある程度まで上昇すると止まるのか?
ちょっと考えてみます。
水温はエンジンが発生する熱量とラジエタが放熱する熱量で決まります。

エンジンが発生する熱量は負荷の大小で決まります。
大きく踏んで上まで回せば発生熱量は当然増えます。

ラジエターの放熱量はラジエターが物理的に持っている放熱容量で放熱量は決まります。
実際の放熱量は水温と外気温度の差に大きく左右され、
その差が大きいほど放熱量は大きくなります。
水温が上昇するというのは、エンジンが発生する熱量がラジエター放熱量を上回っている為に
上昇せざるを得ないという状態になります。
水温が上昇すれば外気温度との差が大きくなる為に放熱量は大きくなり、
エンジンが発生する熱量とラジエタが放熱する熱量が釣り合った所で上昇は止まる。
これが水温上昇の原理です。

では水温を下げるにはどうすれば良いか? 方法は3つ。

1.ラジエターの放熱量を大きくする
2.エンジンが発生する熱量を下げる
3.オイルクーラなどの他の冷却装置で放熱量を確保する

エンジンが発生するる熱量を下げるというのは、
実質的には「アクセルを戻す=回転数を落とす=ペースダウンする」という事です。
まあ、水温が上がったらゆっくり走るんじゃ面白くないので、
真夏に飛ばしても水温が上がらないようにしたい訳ですね。
では、ラジエターを大きくするかオイルクーラを追加してください。
それ以外に方法は有りません。

さて、ローテンプサーモスタットがオーバヒート対策品として売られてますが、
これは何の解決にもなりません。
ちょっと考えれば解かるハズ。
サーモスタットは、オーバークールを防止して水温を適温に保つ為に存在するモノ。
エンジンの発生熱量は運転状態によって変化します。
発生熱量が少ない時にそのままラジエターに水を流せばオーバークールで適温を保つ事が出来ない。
適温以下ではサーモスタットが閉じてラジエターに水を循環させない。
適温になった時にサーモスタットが開きラジエターに水を流す。
そして適温まで冷えたら閉じる。
これを繰り返す事で水温が適温以下にならないようにするのがサーモスタットです。
つまりエンジン負荷が小さく水温が適温になるまではラジエターに水を流さず
オーバークールを防止するのがサーモスタット。
これを適温以下で開くモノにするとどうなるか?
低負荷時からラジエターに水が回り、適温まで上昇するのに時間がかかる。
しかし、高負荷時にはノーマルサーモと同等の温度まで上昇してしまう。
ローテンプサーモは高負荷時のオーバーヒート防止には無関係で、低負荷時にオーバークール状態を作り出す以外の効果は無い。
高負荷時の水温はラジエターの放熱量で決まります。
ノーマルサーモスタットだって水温が適温以上になれば開くし。
水温が適温以下の時に開くローテンプサーモスタットなんて馬鹿げてると思いません?。
水温が適温以下ってのはエンジン運転に適してないわけで、メリットなどほとんど無い。
せいぜい、EGスタート時から全開走行してオーバーヒートまでの時間が微妙に増える位です。

普通、EGに適した水温は80度〜90度くらいで、ノーマルサーモスタットは80度弱で開きます。
ローテンプサーモはもっと低い温度から開くって話です。
水温を適温以下にするとどんな弊害が有るのか?
熱効率の低下による燃焼効率悪化=燃費の悪化とパワーダウン、燃料の気化不良、
水温が適温になるまではECUの燃料MAPが低水温MAPなので通常より燃料が増量され、
パワーダウン&燃費悪化、クリアランス過大による各部金属摩耗の増加。などなど。
百害有って一利無し
何の為に暖機運転があるのか考えて欲しい。
運転温度を適温から10度ほど下げるとクリアランス過大による金属摩耗の増加は10倍ほどになるらしい
ので、
1万キロ走行で10万キロ走行に匹敵するほどシリンダ摩耗は促進される。
普通に走っている時に水温を適温以下に保ってくれるローテンプサーモスタットは、
普通に走るだけで金属摩耗を10倍加速してくれるステキなアイテムです。
それでいて肝心な高負荷高回転走行時の水温はノーマルと同等なわけで
やはり百害有って一利無し。

みんなが下げたいのって低負荷時に保たれている水温じゃなくて、
高負荷時に上がってしまう水温ですよね?
それがスポーツ走行による高負荷だろうが渋滞時のエアコンによる高負荷時でしょ。
高負荷時の水温はローテンプサーモじゃ下げられません(笑)

既に付けている人には大変申し訳ない話ですが、そーゆーもんです。

ハイプレッシャーラジエターキャップってのも売ってます。
ノーマルでラジエターには0.9Kgf/cm2の圧力がかかっていますが、これを1.3Kgf/cm2にしてしまおうっていうシロモノ。

水は大気圧では100度で沸騰してしまいます。
エンジン運転温度の適温が80度〜90度なわけで、これではちょっと上昇しただけで沸騰してしまうので冷却が出来ない。
そこで冷却水全体を加圧する事で沸点を上げてやるのがラジエタキャップの役割です。
0.9Kgf/cm2の圧力を掛ける事で120度程度までは沸騰しない。
130度くらいで大沸騰。
ノーマル水温計のレッドゾーンは大体125〜130度くらい。
ボコボコと沸騰してレッドゾーンまで上昇した状態が130度だと思って下さい。
で、ラジエターキャップを1.3Kgf/cm2のモノに交換するとどうなるのか?
130度まで上昇しても沸騰しない。

ただそれだけ。水温はまったく変らない。沸点が変るだけ。

沸騰したら空気の泡が混ざるので冷却効率が落ちるって話もありますが
ノーマル水温計がレッドゾーンに入っても尚且つ走り続けたい人は1.3Kgf/cm2ラジエタキャップを使いましょう。
ノーマル水温計のレッドゾーン以下でしか走らないという普通の人はノーマルの0.9Kgf/cm2でOKです。
1.3Kgf/cm2は0.9Kgf/cm2に対して1.5倍に近い圧力を掛けているわけで、ラジエタやホース類、ウォータポンプのメカニカルシールの破損を加速させます。
水漏れを防ぐなら沸騰しない範囲で圧力は低い方が良いのです。
というわけで、水漏れを促進させたい人と、水温計がレッドゾーンでも走りたい人は1.3Kgf/cm2ラジエタキャップを使ってみるのも良いでしょう。
でも古いクルマで1.3Kを使うとたちまち水漏れするカモね(笑)。
特にウォータポンプの水漏れは見えにくいので気を付けましょう。

あと、電動ファンの強制駆動とか、より低温から積極的にファンを回そうって物も有ります。
まあ、別に害はないんだけど、本来は温度が下がって冷却の必要が無い時に自動停止してくれるシステムなわけで、
ファンが止まっている時ってのは冷やす必要が無い時な訳です。
それを強制駆動しても意味無いと思うんだけどな(笑)。
サーモが閉じているときから回すのもラジエターに水が流れてないから意味無いし。
中期以降はファンが回り始めるのが前期より遅く、100度近いらしいので前期と同じ90度位で回るようにするぶんにはいいかもしれませんが。
但し、EGの設計が前期と変わっている可能性もあるのでなんとも言えません。

というわけで、お気軽水温対策商品に効果的なモノは無いです。
最初に書いたように水温上昇の根本は、エンジン発生熱量がラジエタ放熱量を上回っている為に起こる事なので
これを解決するにはラジエタ容量を大きくするか、オイルクーラなど別の冷却装置で放熱量を増やしてやる以外に方法はありません。

以上。

戻る

当サイトはフレームを使用しております。
上部にメニューが表示されていない場合はこちらをクリック

http://www.gtolife.net